佐々木能衣装

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能装束について

製造工程

能装束の出来るまでをご紹介いたします。

織物編
1. 織る前の糸です。

この後、糸を染める・練るなどし、それぞれの織物にふさわしい糸に調整します。

織る前の糸です。
締め切り
地色が2色以上になる装束を織る際は、あらかじめ、装束の出来上がりに合わせて糸の段階で段になる部分を色ごとに染めておきます。例えば紅白段の装束なら、紅の部分、白のままの部分を前もって印をつけて分けておき、染めわけます。
2. 糸繰り
糸繰り
糸繰り
束になった状態の糸(綛「かせ」といいます)を五光と呼ぶ器具にかけ、糸枠に巻き取ります。
3. 整経・・・経糸の準備をします。
歩 あぜ
あぜ・歩(あるき)
織物を織るためには経糸の順序を整えておく必要があります。そのために糸枠に巻き取った経糸用の糸を、糸の配列が乱れないよう1本ずつ交差させていきます。(「あぜをとる。」とよぶ作業です。)
そして、経台(へだい)という両端に杭のついた台を利用して、杭にあぜをひっかけて固定しておき、杭と杭の間を糸枠から糸を引き出しながら歩くことで経糸の長さを所要の長さにそろえていきます。(どれくらい歩くかの単位のことを「歩」(あるき)といいます)
たてまき整経した経糸を機草(はたくさ)という厚紙をはさみこみながら千切(ちきり)に巻いていきます。
たてまき 機に経糸をセットした際のあぜの部分です。
てべ(手経)
当方では経台(へだい)を利用しての手作業で整経をする「てべ」という方法で整経をしています。通常は、西陣でも大半が機械で行っている作業です。
手作業で行うことで、手間はかかるのですが、能装束は、基本的に受注生産・一品もののため、装束1反分の経糸がつくりやすい、経糸を縞にする際の自由度が高い、かすり染めなどの細工が可能であるなどの利点があります。
たてつぎ(経繋ぎ)
新旧の経糸を一本ずつ繋いでいきます。
専用の機械もありますが、手作業で行うこともあります。
4. 緯(ぬき)巻き・・・横糸の準備です。
緯(ぬき)巻き 管に巻かれた絵緯(えぬき)です。
緯(ぬき)巻き
地組織に使用する横糸はもちろん、縫い取りに使用する横糸もあらかじめ必要な量をを準備し、管(くだ)に巻いておきます。
5. 紋紙をジャガード機にかけ、文様を織る準備をします。
紋紙をジャガード機にかけ、文様を織る準備をします。 紋図・・・織物の設計図です。
紋紙
穴のあいた厚紙が糸でとじつけられてるものです。
文様を織り出すときに指示をする役目を果たします。
紋紙の枚数は模様1パターンあたりの緯の越数(横糸を通す回数)で決まりますので、
文様によっては 何千枚にもなり、重さもかなりのものになります。
紋図
紋織物を織る際の設計図といえるものが「紋図」です。
細かな方眼のうえに織物の文様が描かれており、縦線は経糸を表し、横線は緯糸を表します。
方眼の1マスが紋紙の穴1つに当たり、絵緯を通す順番が指示されています。
この升目を把釣(はつり)とよび、紋織物の考え方の基礎となるものといえます。
織物は縦糸と横糸が垂直に交差することで形成されることがほとんどのため、
設計図も縦横が垂直に交差する方眼形式のものが使用されています。
6. 製織

「踏み木」とよばれる足下の板を踏むと、踏み木にかかった縄から上の滑車、そして紋紙へと動きが伝わり、横糸を通すべき箇所の経糸が持ち上がります。
そこに杼を通すことで横糸を入れ、「かまち」と呼ばれる部分を手前に打ち付けて、再度踏み木を踏み、横糸を固定させる、という作業の繰り返しで織っていきます。

製織 杼(ひ)
縫い取り
こび(子杼)という小さな杼を使用し、文様になる部分に絵ヌキという光沢のある横糸を通します。糸が浮き出て、まるで刺繍のような効果をもたらします。
ひきばく(引箔)
金銀箔を織り込む技法です。細かく裁断した箔を、竹のへらの端の切れ込み部にひっかけて、持ち上がった経糸に引き込みます。
7. 裁断

織り上がった反物を注文に応じた寸法に裁断します。このとき、柄合わせなどにも注意をはらいます。

8. 縫製

手縫いで丹念に縫い上げ、完成です。